
Orgin 5話 一つの時計に、一人の目。
20年以上ヴィンテージウォッチと向き合ってきて、私が強く感じることがあります。
ヴィンテージウォッチは、以前より多くの方に知られ、評価されるようになりました。
私は、それをとても良いことだと思っています。
長い年月を経た時計が、その価値にふさわしく評価されるようになった。
それは、この文化にとっても喜ばしい変化です。
一方で、市場を見続ける中で感じることもあります。
本当に良い状態で受け継がれてきた時計は、年々少なくなっているということです。
同じモデルでも、その個体が歩んできた時間は一つひとつ違います。
だから、同じ基準だけで判断することはできません。
私は、一本の時計を仕入れるということは、その時計の価値を認めることだと考えています。
だからこそ、その後の状態確認や商品化の判断まで、自分自身が一貫して向き合いたいと思うようになりました。
もちろん、効率を求めれば、もっと違う方法もあるのでしょう。
けれど、ヴィンテージウォッチは、大量生産された新品とは違います。
一本一本が異なる歴史を持ち、それぞれに異なる個性があります。
その違いを見落としてしまえば、この世界が本来持っている価値まで見落としてしまう。
私は、それだけはしたくありませんでした。
だから、一つの時計を、一つの基準で見続ける。
その基準は、市場の流れではなく、自分自身が長年積み重ねてきた経験の中で育まれたものです。
ヴィンテージウォッチが注目されている今だからこそ、本当に価値のある個体は「価値がある」と、きちんと伝えていかなければならない。
そのためには、選ぶ基準にも、伝える基準にも、一貫性が必要だと私は考えています。
それが、私が今も変わらず、一つひとつの時計と最後まで向き合い続ける理由です。


