
カルティエは「ムーブメント」で選ぶ時計ではありません。
ヴィンテージカルティエについて調べていると、
「ETAムーブメントが良い。」
「Jaeger-LeCoultre製だから価値が高い。」
「Piaget製は希少。」
そんな言葉を目にすることがあります。
もちろん、それぞれのムーブメントには特徴があり、時計好きの方にとっては興味深いポイントでもあります。
しかし、私たちは少し違う考え方をしています。
カルティエは、ムーブメントそのものを主役にするブランドではありません。
美しいデザイン、優れた装着感、そしてライフスタイルに合わせた時計をつくるために、その時代に最適なムーブメントを選んできたブランドです。
時代によって変わるカルティエの時計づくり
現在のカルティエは、多くのモデルで自社製ムーブメントを採用しています。
一方、ヴィンテージカルティエが製造された時代は、ETA、Jaeger-LeCoultre、Piaget、Peseux、EWCなど、さまざまなメーカーのムーブメントを採用していました。
これは、どちらが優れているという話ではありません。
その時代ごとの時計づくりの考え方の違いです。
当時のカルティエは、自社製という考え方にこだわるのではなく、その時計に最もふさわしいムーブメントを選ぶことを大切にしていました。
カルティエが選んだムーブメント
時計ブランドの中には、ムーブメントそのものをブランドの価値としているメーカーもあります。
一方、カルティエが大切にしてきたのは、時計全体の完成度です。
ケースの美しさ、腕に着けたときの装着感、そして時計が持つ世界観。
ムーブメントは、そのすべてを実現するための重要な要素であり、主役ではありません。
例えば、スーツの袖口に自然と収まるような薄いケースを実現するためには、フレデリック・ピゲやPiaget、Jaeger-LeCoultreなどの薄型ムーブメントが採用されています。
一方で、ヴィンテージカルティエの多くに採用されているのがETA(Cal.78系)です。一部にはPeseux製ムーブメントが採用されたモデルもありますが、基本となるのはETAです。
ETA(Cal.78系)は耐久性や安定性に優れ、現在でもメンテナンスを行いながら長く愛用できる実績があります。そのため、カルティエは日常使いを想定した多くのモデルに採用してきました。
また、サントスのようなスポーツモデルでは、自動巻きムーブメントの厚みがケースデザインと調和し、力強い存在感を生み出しています。一方で、よりスマートな着け心地や軽快さを求めるのであれば、クォーツモデルという選択もあります。
このようにカルティエでは、「このムーブメントを使いたい」から時計を設計するのではなく、「こういう時計をつくりたい」という発想から、その時計に最適なムーブメントを選んできました。
だからこそ、ETAだから優れている、Jaeger-LeCoultreだから価値が高い、と単純に考えることはできません。
ムーブメントは時計の主役ではなく、美しいデザインや快適な装着感を実現するための存在なのです。
ムーブメントではなく、カルティエを選ぶ
私たちは、まずムーブメントから時計を選ぶことはおすすめしていません。
まず考えていただきたいのは、
- どのような服装に合わせたいのか。
- どんな場面で身に着けたいのか。
- どのようなデザインに惹かれるのか。
その答えが決まれば、自然と選ぶべきモデルが見えてきます。
そして、そのモデルにはカルティエが最適と考えたムーブメントが搭載されています。
ムーブメントでカルティエを選ぶのではなく、カルティエを選んだ結果、その時計に最適なムーブメントが搭載されている。
カルティエというブランドを20年以上時計を見続けた結果、私が選び続けている理由については、「私がヴィンテージカルティエを選び続ける理由」でも詳しくご紹介しています。
私たちは、その考え方こそがヴィンテージカルティエの本当の魅力だと考えています。
現行カルティエとヴィンテージカルティエ
現在のカルティエは、自社製ムーブメントを中心とした時計づくりへと進化しています。
一方、ヴィンテージカルティエには、その時代ならではの自由な発想があります。
デザインを最優先に考え、その時計に最もふさわしいムーブメントを選ぶ。
その思想から生まれた数々の名作は、今もなお世界中で愛され続けています。
現行カルティエには現行カルティエの魅力があり、ヴィンテージカルティエにはヴィンテージならではの魅力があります。
私たちは、その時代ごとのカルティエの哲学を理解しながら、自分のライフスタイルに合った一本を選ぶことこそ、ヴィンテージカルティエを楽しむ一番の方法だと考えています。
※ヴィンテージカルティエで多く採用されているETA(Cal.78系)にも、年代によっていくつかのバリエーションがあります。それぞれの特徴については、次回以降のOwner's Cartier Guideで詳しくご紹介します。


